小説

『ウサギとカメと原子核』にぽっくめいきんぐ(『ウサギとカメ』)

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 ウサギどんとカメどんの競争。
――そこに乱入したのは、原子核だった。 
 とある昼下がり。

 ある森の小道に、ウサギどんと、カメどんがいました。
 ウサギどんは、カメどんの足が遅いのを、バカにして笑いました。
 カメどんは、「あなたは足が速くても、きっと、わたしの方が勝ちますよ」と言いました。
 するとウサギどんは、「では、競走しよう? そうすれば、わかるよ」と言いました。
 カメどんは、この競走を受けて立ちました。

 これを近くで聞いていた原子核どんは、「そもそも、お二人共、私には勝てませんよね」と、小さな高い声で言い出しました。
 ウサギどんとカメどんは、原子核どんのこの発言を無視しました。

「誰が勝敗を判定するのですか?」と、カメどんは言いました。
「ちょうどこっちに向かって歩いてくる、あの女子高生の二人組に、審判を頼もう」と、ウサギどんが言いました。
 このお願いを、快く聞き入れた女子高生の二人組。

 一方の女子高生は、ゴール地点である丘の上へと、すたすたと歩いて行きました。
 丘の上には、哲学者と思しき男性がいました。
「アタシのツレなの。あの丘の上の哲学者あたりをゴールラインにするからね」
 そう言い残して、この女子高生は、丘の上へと向かったのです。

 もう一方の女子高生は、ウサギどんとカメどんの足下あたりに、小枝で直線を引き、スタートラインを作りました。
 スタート地点にいる女子高生が、競走を始める合図をしました。
「よーい、どん! と言ったらスタートだどん!」

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