「そういうのやめて」と、ウサギどんが言いました。
「太鼓の達人か?」と、カメどんが言いました。
「あはははは」と、原子核どんが小さな高い声で、大笑いしました。
でも、ウサギどんも、カメどんも、女子高生も、これを無視しています。
競走、スタートです。
たちまち、足の速いウサギどんがカメどんを引き離しました。
しかし、カメどんはあきらめずに、休まず歩き続けました。
原子核どんの周りには、複数の電子が、軌道上を回っていました。
ウサギどんは足が速いと思って安心しているものですから、途中で大きな木を見つけると、木かげでひと休みしました。
それからしばらくして、ウサギどんは起き上がりました。
「少し眠ってしまったなあ。まあ、どうせカメどんは後ろにいるはず」
ウサギどんは大きくのびをすると、そのまま、ゴールである、丘の上の哲学者の方へと向かいました。
「よーし、もうすぐ哲学者だ……と、……あれれ?」
自分が勝ったと思っていたのに、なんと、カメどんが先に哲学者に辿り着いていたのです。
「僕の勝ちだよ」と、カメどんが言いました。
「ぐぬぬ」と、ウサギどんが言いました。
そこに割って入ったのは、やはり原子核どんでした。
「私こそが、勝者ですね」
カメどんもウサギどんも、びっくりして言いました。
「原子核どんは、そもそも移動できないじゃないか!」