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『薄くて苦い』竹原達裕

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 夜。部屋の電気は消え、街の明かりが中を薄く照らす。綺麗に整頓された、一人暮らしの1LDK。壁際にテレビ、反対側の壁にベッドが、その間にローテーブルが置かれている。ベッドの横、枕側には本棚と衣装タンス。本棚の上には写真立てがあり、中の写真は砂浜で二人の女性が並び笑っている様子を写している。満面の笑みで映っているのは相原友希。片手はピースサインを作り、もう片方の腕を隣の女性、田辺梨花の肩に回している。が、身長が足りず、梨花が中腰になってしまっている。写真の中の梨花は困ったような照れ笑いを浮かべている。
 友希は今、この部屋のベッドの上ですーすーと寝息を立てている。スーツは着たままで、ジャケットだけハンガーに掛けてある。梨花は部屋着で、ベッドを背もたれにしてローテーブルの手前に座っている。テーブルの上にはジョッキグラスが二つと、ホッピーの空き瓶が二つ。梨花はジョッキを一つ手に取る。綺麗に整った顔を薄明かりが照らす。
「薄っ・・・」

 
「はい、まずビールの人」
 ビールは苦くて嫌いだ。
「ちょっと、ちゃんと手、挙げてくださーい」
 子供っぽいと思われるかもしれないけれど嫌いなものは嫌いだ。
「・・・はい、したら他聞いていくんで、何頼むか言ってくださーい」
 でも彼はいつも美味しそうにビールを飲む。
「相原さん?」
「え?あ、はい」
「何頼む?」
「えっと・・・じゃあ、ホッピーを」
 だから私はちょっと頑張ってホッピーを飲む。

 
「では、先月の我々の頑張りに、カンパーイ」
「カンパーイ」
 部長の音頭で飲み会が始まった。
 今日の飲み会は、先月の営業目標達成のご褒美。言ってみれば打ち上げみたいなものだ。
「ちょっと部長!イッキはマズいですって!」「いいでしょ、無礼講無礼講」「あ、こっちビール2つ追加で」「料理取り分けますねー」
 我々さわらび不動産札幌センター社員が一堂に会しての大宴会・・・とまではいかないけれど、会場のあちらこちらでにぎやかな声が聞こえる。ここ最近こういう大きな飲み会がなかったから、みんなのこの浮かれようもうなずける。・・・しかし部長、初っ端から飛ばすなあ。
 さて私はというと、会場の隅の方に、なるべく絡まれないよう静かに座ってホッピーを飲んでいた。こういう飲み会は嫌いじゃないんだけど、どうもテンポが合わない。触らぬ神に何とやら、というやつだ。くいっとジョッキを傾ける。微炭酸の優しい刺激とお酒のほのかな苦味が喉に流れていった。

 
「おーい横山。飲んでるかー」

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