『マドロシカは三度眠る』
篠崎フクシ
(『眠る森のお姫さま』)
不慮の事故によって、わたしは永い眠りに就いた。しかし何故か、意識は自由に浮遊することができた。一方、植物学を研究する婚約者は、わたしの復活を願っていたが……。
『100年目』
NOBUOTTO
(『夢十話』)
ロボットと人類の戦いはロボットの勝利に終わった。この争いの間、明子とハル、武志とジェシーという二組の人間とロボットは自分達の良心に従って生きようとした。そして100年後、それぞれの結末を迎えるのであった。
『アリとキリギリス』
鷹村仁
(『アリとキリギリス』)
ある日、会社からリストラの宣告を受ける奈良橋。39歳という年齢で再就職に奔走している時、一本の動画を息子から見せられる。そこに映っているのは3年前に会社を辞めた同期の小早川だった。小早川は動画配信者になっていた。そこから奈良橋は自分の生き方に疑問を持ち始める。
『アロンアロンアンドアロン』
もりまりこ
(『月夜のでんしんばしら』)
妻の真夜にもともだちはいなくて、俺もいなかった。でも人生マグネットだわって喜んでいたのも束の間、妻が死んだ。妻の真夜が好きだった<神納ゲンジロウ>の踊りをみにゆくことにした。ただし入場条件があったのだ。<ひとりできてください。ひとりぼっちのひと、よろしくです>、そう書かれていた。
『かぐやへ』
本谷みちこ
(『竹取物語』)
かぐや姫を最初に見つけたのは、竹取の「嫗」だった。そして、かぐや姫は親の虐待に傷ついて、月から逃げてきていた。二人は、お互い自分の住んでいる世界の価値観に、苦しんでいた。かぐや姫が月に帰らねばならなくなった時、二人はあることを思いつく…。
『ビートルズ』
もりまりこ
(『変身・冬の蠅』)
あなたと会った次の日。世界は、昨日となんらかわらないのに、なにかが違っていた。その朝目覚めたらわたしは3匹のカブトムシを発見した。弟の足穂と継母と父親の部屋で。どうすればいいのかわからない、迷ったからちょっと口角を上げて笑ってみた、たったひとりバスルームの鏡の前で。
『愛しのルリ』
緋川小夏
(『八百比丘尼伝説』『人魚姫』)
ある日「僕」は海で傷ついた人魚と出会う。瑠璃色の美しい瞳から、連れ帰った人魚に「ルリ」と名付けた。「僕」は徐々にルリの虜となり、仕事も辞めて、自宅に引きこもるようになる。やがて「僕」はルリを愛するあまり、ひとつになりたいと熱望するようになる。
『花咲か姉さん』
黒髪桜
(『花咲か爺』)
仕事から帰ってきた悟は玄関先で由紀子と遭遇し、椿への結婚祝いを渡される。悟はプレゼントを郵送するついでに椿に手紙を書くことにした。手紙を書き進める悟の頭を巡るのは、不思議な力を持つ姉と過ごした日々と、血の繋がらない姉に対して抱えていた想いだった。