『RYUGU嬢』村田謙一郎(『浦島太郎』)
会社員の三浦光太郎が、少年たちから助けた白猫についていくと、そこはキャバクラ[RYUGU]だった。そこで三浦は、白猫が姿を変えたキャバ嬢[乙姫]に迎えられ、お礼として酒池肉林の接待を受ける。開けてはならぬという小箱を、三浦は乙姫への誘惑に負けて開けてしまう……
『と・か・げ』
もりまりこ
(『とかげ』)
星尾は小さい頃からおなじことを言われつづけてここまできてしまった。ちゃんと言葉が伝わった試しがない。ある日、小さな庭にとかげがやってきた。やつに尻尾はなかった。まるで俺じゃないか。落ち葉が枝から落ちるのをみていた。せいせいする無所属になったのだ。まるで俺じゃないか。
『愛はふたりが同時にめざめる朝』
いわもとゆうき
(『浦島太郎』)
竜宮城から帰ってきて一年が過ぎた頃、ぼくの前にふたたび乙姫があらわれた。どうやら、いつまで経っても玉手箱を開けないぼくに業を煮やしたらしかった。
『銀河、夢で見た』
森な子
(『銀河鉄道の夜』)
新社会人の春子は、家族との間に溝のようなものがあることを感じていた。姉の花江は幼い頃から引きこもりがちで、両親は姉を可哀想だと言い、そんな実家を気味悪く思った春子は意を決して家を出る。ある日、苦手に思っていた姉の花江が夢に出てきて、二人は美しい銀河を走る列車に乗ることになる……。
『カッソは神になる』
美日
(『桃太郎』『浦島太郎』)
13歳の少年・カッソの小さな村はある日武装集団に破壊された。家族を殺されたカッソは、武装集団が落としていった銃器を担ぎ、その車の後を追った。だが車に追いつくことはなく、ある日、洞穴に落ちてしまった。そこに、一筋の光が差した。
『誰』
沢田萌
(『河童』)
深い森の中に河童が住むという伝説の沼があった。僕はその沼に河童釣りに出かけ、釣ろうとしていた河童が突然現れ、僕を連れ去った。河童は僕が人間ではなく自分を人間だと妄想する河童だと言う。僕は妄想癖のある危険な河童として投獄されてしまう。はたして僕は河童かそれとも人間か。
『ただこれが愛じゃなかっただけ』
柿沼雅美
(『チャンス』)
恋愛ってなんだと思う? 恋愛なんてものは色欲を上品に飾り立てて「愛」なんて言葉をくっつけているだけで、本来は恥ずかしいものだ。と、僕は目の前の女の子に言いたい。それに恋愛も人生もチャンスで、僕にはたまたまそのチャンスがなかっただけのことだ。
『思い出のきびだんご』
あきのななぐさ
(『桃太郎』)
鬼に奪われた大切なもの。それを取り返すべく、桃太郎は一人、旅に出ることを決意します。旅立ちの日にお婆さんにきびだんごを作ってもらうように頼みますが、お婆さんはそれを忘れていました。それでもお婆さんは何かを作って桃太郎に持たせます。いざ、鬼ヶ島へ。大切なものを取り返すために。
『コリキといっしょ』
緋川小夏
(『花さか爺さん』『桜の樹の下には』)
生まれたときからずっと一緒だった、犬のコリキが死んでしまった。祐樹は祖父と一緒にコリキの亡骸を庭にある桜の樹の下に埋めた。落ち込む祐樹。春になったら父親が単身赴任している横浜へ、母と一緒に引っ越すことになっていたけれど……。