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『込められた想い』霧赤忍


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9月期優秀作品

『込められた想い』霧赤忍

 
「おーい、大樹(だいき)こっちに来い。一緒に見るぞー甲子園」
「その通りじゃ、はよう来んか。大樹!」
「……うん、わかった」
 僕のお父さんとお祖父ちゃんは夏の甲子園が大好きだ。リビングで二人掛けソファにふんぞり返り、茶菓子を食べながら野球中継に見入っている。
「おい、今年はどこが優勝するかのぅ?」
「今年は関東勢がくるかもわからんな」
「…………」
 普段はほとんど会話しないのに、二人とも元高校球児だった血が騒ぐのか、甲子園の時期だけは優勝校を予想して談笑しながらお茶をすすっている。
 お祖父ちゃんは甲子園の始まる少し前に毎年坊主頭にするから、高校球児の気分まで味わいたい熱の入れようだ。でも額に刻まれた深い波上の皺や太い眉が高校生には似ても似つかない。
 僕は二人の甲子園好きに巻き込まれて、本当はサッカー部に入りたかったけど、お父さんがグローブと野球の入門書を買ってきたから言い出せず野球部に入った。
 練習には毎回参加しているけど、ボールは小さいし、バットは細いしで上手くならない。ポジションは三塁コーチ。コーチと言っても特に何もすることがなく、際どいタイミングの時だけ両手を広げて〈セーフ、セーフ!〉と大声で叫ぶのが試合での僕の役目、練習試合では終盤に代打で出してもらえるけど空振り三振。
「おい、大樹。野球の調子はどうだ?」
「……うん、まあまあかな」
「まあまあって何じゃ? ヒット打てるようになったのか?」
「……うーん、まだかな」
 一緒に野球を見ると部活のことを訊かれるから、あまり一緒に見るのは好きじゃない。二人から質問攻めにされるから、テレビで見る刑事ものの取り調べみたいで緊張する。
「ねえ、大樹。野球見ているところ本当ごめんだけど、買い物に付き合って! アレを買い忘れちゃって。一人じゃ大変だから、ね、お願い」
 キッチンにいたお母さんが手を拭きながらリビングに向かってくる。
「うん。行くー!」
「アレってなんだ? どうせ大樹をこの場から連れ出す口実だろう?」
「違うわよ。必要なのよ! アレが……えっと、アレよ」
 お母さんは眉を触りながら、お父さんたちに正体の定まらない「アレが必要」を言い張ると「そういうことなので二人とも行ってきますね!」と僕を連れ出してくれた。

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