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『カーシャ•トッチ•シンバル』大澤匡平


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8月期優秀作品

『カーシャ•トッチ•シンバル』大澤匡平

 
 もひとつの人生があるなら。
 人生、運命、命、愛、絆。こんな味もしない鯣を噛む人間にはならず、それを馬鹿にする若河童にもそうだと、昨日まで。

 ロフトつきの学生暮らしに手をひっぱられ経済大学へ。
 経済とゆっても、偏差値低めで定員割れのおまけもついてくるウェルカム新入生。ニクソンショック(1971年に起きた経済変化)やインセンティブ(ある行動をとらない理由)等の経済単語を覚え数えるより、卒業単位を指折りで数える約千日。
 初めだけ興奮して、金曜はロフトデーなんて制定しては寝てみたが。半年もすれば通年の簡易物置へと再制定。
 タバコを嗜んでみようかと3駅乗って、経済学的に奇跡的に成り立つマイナーコンビニ(おすすめ商品はマイナーコーラ)で細めの細いタバコを買い、窓に背を向けて自宅で吸ってみたが、喘息持ちだということを思い出してはゴミ袋へ。
 学科の男女は、春になれば新入生へ無意味に地元を聞いて、夏になると無意味なバーベキューを繰り返し、秋は無意味に学祭で豚汁を売りさばき、冬には無意味な鍋パーティを開催し続けた。僕は、そういう奴ら総称して大量生産型のタイプBと呼んだ。
 という、僕はタイプBに嫉妬をし、ベランダで30%OFFになったプルコギを焼くタイプEなりの浅い生活を好んだ。

 大学世界になりかけた時には監視してるかのように実家からの連絡。
「こんなの出てきたけど。どうする?」
 小猿がシンバルを持ったおもちゃの写真が添付されて。
「いらない。」
 シンバルを早朝に鳴らして、親に怒られた小さい思い出など猿に化した僕にはとっくに必要ないもの。
大学というのは、偽自立意識を育む施設でもあって帰省が煩わしいと教える。といえど、盆や年末には、罪悪感の残らない程度に帰り、懐かしさが侘しさへと変わる寸前にロフトへと。
 卒業した先に勤めたのは経済とは縁もゆかりも無い大学近くの市役所だった。社会人1年目にあった親しくない友人からの飲み会招集も、2年目にはすっかりで飲み会も精選された。
 そのかいもあってか、3年目頃には親しい友人ともすっかりになった。
 28の手前に越した部屋にはロフトは無いけど、トイレとお風呂は別だった。冷蔵庫は賞味期限切れの調味料と発泡酒で整頓。クローゼットには、デザインよりも通気性の優れたスーツ達が並んだ。
 男女と言えば、男女について言えば。
 直近で数年も前になるが,市役所の保健課に勤める美人さんが素敵かもだなんて浮かれてみたけれど,日曜には渋めのおじさんと腕を組んで歩いてるのを見た。夜には、ろくでもない女だとベランダで10%OFFのステーキを焼いた。

 親のおかげと親のせいで僕が完成されつつある。

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