『今も護りて』
粟生深泥
港の拡張計画で、住民から「祟られる」と撤去を反対された古い防波堤。県から出向中の豊島が来歴を調べると、その正体は終戦まで町を守った駆逐艦「粟」だった。住民が密かに沈めた軍艦防波堤と知った豊島たちは、町の記憶を未来へ残すため、撤去ではなく活用する新たな改修計画を実現させる。(小説)
『林檎』
カムイ
長い服役を終えて冬の電車に揺られる男。向かいに座る少年と林檎の甘い匂いが彼の理性を狂わせる。床に転がった林檎を拾う少年の指に触れた瞬間、男の抑制は破綻し、本能的に手を伸ばそうとしてしまう。少年が去った後も男は自らにどうしようもない本性が存在し続ける事を自覚し、一人絶望するのだった(小説)
『葬儀屋は死なせない』
上田航平
父から継いだ小さな葬儀屋は倒産寸前。深夜、霊柩車で帰宅する社長は、ビルの屋上で自殺しようとする男を見つける。男の死を「ビジネスチャンス」と考えた彼は、葬儀屋ならではの奇妙な説得を始める。(小説)
『プリン、買いに行かん?』
相坂トア
親友・祥子の彼氏が、知らない女の子と親しげに過ごす姿を見てしまった亜希。証拠の動画を撮ったものの言い出せず、翌日、余計な一言で祥子を傷つける。放課後、二人はプリンを半分こし、祥子は「それでも好き」と告げる。亜希は動画を見せず、「もうちょっとだけ見ててほしい」という願いに応える。(小説)
『飛ぶっきゃない』
三倉くら
寡黙な文学少年・大江那喃と、問題児少女・川端桐。市の文芸祭で那喃が大賞、桐が佳作を取る。高校の文芸部で再会、お互いがお互いを認めながらも口には出さず、卒業後は疎遠に。作家になった那喃が受賞会見で「尊敬する作家は川端桐」と語ったことをきっかけに、桐は再び小説を書き始める。(小説)
『標星』
十霧遙
1940年代、灯火管制下の日本。女学生のナオは失恋した友人、サチを慰めるために同級生のリエ子、ミヨ子とともに自転車で星の見える丘を目指す。そこで目の当たりにしたのは、焼夷弾の幻だった。ナオは逃げようとして転んでしまうが、サチに助けられる。サチは、生きて想いを伝えることを決意する。(小説)
『甲子園を目指さない』
太田純平
高校の弱小野球部が、中学生との試合でボロ負けする。すると直後の部室でキャプテンの与座が「俺たち甲子園を目指すのをやめよう」と一同に告げる。与座の「楽しく野球をする」という方針に多くが賛同する中、四番エースの乃村は反対。部活どころか野球をやめると言い出す。(小説)
『DOPER』
吉田文矢
若手女優の二条美亜は映画の主演に抜擢されたが、クランクインを前に「藍」役の役作りに行き詰まっていた。追い詰められた彼女は、AIが生成した役の模擬人格(記憶と感情)を脳内インプラントする禁断の最新技術を試す。撮影は順調に進むが、美亜の生活は「藍」の狂気的な人格にかき乱され始め――。(脚本)
『龍をかえしに』
森水陽一郎
思わぬ診断を下された洋食店のおかみ、宮子。ある夜、閉店まぎわに老婆がおとずれ、理解のできない忠告を受ける。「曇天の龍が、とぐろを巻いている」と。病状にも重なるその言葉にうながされ、息子の竜太とともに南の離島に向かうが、目的の龍の姿はどこにも見当たらず・・・。(脚本)
『最寄りの正義』
太田純平
巡査長の黒沢修司(34)は、もともと刑事課志望であった。しかし毎度のように書類審査で落とされ、万年、交番勤務である。今日も黒沢が腐りながら働いていると、ひょんなことから自動販売機の下に『ごめんなさい』とだけ書かれたメモ書きを見つける。子供の字だ。黒沢の勘が告げる。何か匂う。(脚本)
『押せ‼︎』
岡本伸吾
童話『裸の王様』をモチーフに、絵画の展示即売会を舞台にした人間ドラマ。虚飾の言葉とテクニックで着飾ったセールスの世界で、売上ゼロの新人・藤堂は苦悩する。先輩の山口に背中を押され、極限状態で藤堂が放ったのは、飾りのない愚直な願いだった。嘘の衣服を剥ぎ取った「本音」の強さを描く。(脚本)



