「あっはっは、そう都合良く行かないさ。まぁお仕事頑張ろうよ、君ならいい人捕まえられるって」
ミキュミキュはピョンとベッドから飛び降りて、軽やかにヒールで闊歩する。後ろ姿には自分を商品と割り切った覚悟とプライドが輝いていた。純真無垢なアイドルはもう居ない。
マネージャーはVRサービスセンターの会計をする。
「データの入ったチップはお持ち帰りされますか?」
受付の女性が訊いた。
「いや、処分で」
女性がカウンターに設置されたディスポーザーにチップを放り込むと、小さな破砕音がした。
「待ってよミキュちゃん、タクシー呼ぶから」
地味な風貌のマネージャーが彼女の後を追う。一瞬だけ振り返る。破砕音が胸に響く。
さよなら俺の十年の恋。