「死人らしく墓に籠ってろよ、牛女ぁ……!」
振り下ろされた鉈がロッカーのドアを突き破り、私は思わず悲鳴を上げた。
二度、三度。振り下ろす鉈がドアをずたずたにする。裂けたドアの隙間から、怯えた私と目が合った牛女は、そこで初めて笑った。無理に笑ったその頬は、ぶちぶち音を立てて横に裂ける。
「ちょ、調子づいてんじゃねえ!」
私はロッカーのドアを、牛女ごと突き飛ばした。
虚を突かれた牛女が転び、鉈を取り落とす。興奮していた私はその鉈を、何の迷いなく拾い上げて、牛女の頭に喰らわせた。
ガン、と、骨に当たった衝撃が手に跳ね返る。鉈を引き抜いて、もう一発。
「死人が、牛が、人に迷惑かけんなよ! 死ね、もう一遍、死んじまえぇ!」
五発くらい食らわせて、牛女は動かなくなった。鉈を取り落とし荒い息を繰り返した私は、ようやく笑うだけの元気を取り戻した。
「ハハハハハ! ざまぁみな、人間様に逆らうからだ!」
高笑いが響く、真っ暗な教室に私は一人で立ち尽くす。
突如、教室の電気が点けられた。
「誰だ!」
振り返った私の目の前にいたのは、昔の友達たちだった。
呆気に取られて目をむく私に、友達は青ざめながら近付いてくる。何してるんだ、と仲間の一人が恐る恐る聞いてきたので、私は噛みつくように言い返してやった。
「見りゃわかんだろ! 幽霊退治だよ! この牛女が死んでまで人様に迷惑かけっから、 ちょいと思い知らせてやったんだ!」
「幽霊……由井、あんた何言ってんの?」
「あんたこそ何言ってんだ! 牛女は、明菜は、飛び降りて死んだろうが!」
「明菜……死んでないけど」
「……は?」