次の日、夜明け前の薄暗い時分から天女さまと弥兵衛は達吉を探し続けました。しかし達吉は見つかりません。何せ、達吉は地中深くに埋まってしまっているのですから。
弥兵衛は天女さまを宥めて探すのを止めるように言いますが、天女さまは構わずに探し続けました。次の年がきて、そのまた次の年が来ても、ずっと探し続けました。
その内に弥兵衛は達吉の亡霊に悩まされるようになりました。来る日も来る日も枕元に達吉の亡霊が立って、弥兵衛をじっと見ているのです。瞬きのひとつもせずに見られ続けて、弥兵衛はだんだんやつれていきました。眠れなくなった弥兵衛の目の下には濃い隈ができて、頬はこけ、まるで弥兵衛自身が亡霊のようになっていました。
次の年、弥兵衛はケタケタと笑いながら泡を吹いて死んでしまいました。その姿は幽鬼のようだったといいます。
天女さまは、達吉の帰りをずっと、ずっと待ち続けました。二人が出会った綺麗な池のほとりで、ずっと。雨の日も風の日も、吹雪の中でも。遂には倒れてしまうまで、ずっと待ち続けたのです。
天女さまが横たわった場所には、みるみる内に稲が生えてその穂を垂らしました。池には清水が溢れて川となり、村を潤しました。その豊かさは達吉のいる小山にも届いたのです。
いつしか小山には苔が生え、草が生え、花が生え、木が生えて、ついには山となりました。その山の地下深くには、今でも石になった達吉と、天女の羽衣が眠っているそうな。むかしこっぽり。