達吉は羽衣を抱え込んだまま、石になっていたのです。動かそうと押してみても、せめてと羽衣を引っ張ってみても、全く動く様子はありません。石となった達吉は、それはそれは硬く、叩いてもびくともしませんでした。弥兵衛は途方に暮れて、せめて誰にも見つからぬようにと達吉を埋めることにしました。石は重く、到底一人の力では動かせなかったので、そこらの土をかき集めて被せたのです。たくさんの土を被せたその様は、小山のようになっていました。無我夢中で被せ続けていると、いつのまにか日はとっぷりと暮れていました。
村に戻った弥兵衛を出迎えたのは天女でした。弥兵衛はどきりとして冷や汗が出てきました。もし行いがバレてしまったら、天女には会えなくなるでしょう。弥兵衛はそれが恐ろしくて、少し目を逸らしました。
「弥兵衛さん、達吉さんを知りませんか。昨日から帰って来ないのです。」
不安そうな天女に、弥兵衛は驚いたふりをして答えました。
「そういえば昨日の帰りでは見かけなかった。もしかしたら何処ぞで怪我でもしたのかもしれない。」
「ああ、なんて事。今すぐ探しに行かないと。」
今にも飛び出して行きそうな天女さまを見て、弥兵衛は面白くありませんでした。
「待ちなさい。もう日が暮れてしまった。探すのは明日にするんだ。」
弥兵衛は怒ったように言って、天女さまに凄みました。天女さま驚いて怯みましたが、それでも渋ってみせました。
「でも・・・」
「明日はおれも探そう。どのみち今日は暗く
て危ない。明日にしよう。」
そう念押しすれば、渋々天女も引き下がりました。