小説

『涙の確証』加持稜誠(『竹取物語』)

 19時40分。
 仕事に一段落をつけ、僕は職場を飛び出した。そしてスマホに飛びつき、結果発表サイトへと急ぐ。
 あー! もう! IDやらパスワードやら、マジでめんどくせえ!




 そして結果は……
 10組中、


 3位……




 敗退だ……
 僕のこの数か月の想いと散財は、まさに水泡に帰した……








 それからというもの、事務所側も見切りを付けたのか、オトギーズのライブは激減した。そして駆け付けるヲタも減り、親衛隊は推し変して解散したようだ。危機を察して僕が散財するも、もはや焼け石に水……
 そしてまた、僕は独り取り残された……












 数か月後。
 心にぽっかり空いた穴は埋まらぬまま、いたずらに時間だけが過ぎ去っていく。
 分かってはいるけど、それでもあの場所へ立ち寄って帰るのが日課になっていた。
 「はぁ……」
 仕事帰り、今日もいる筈もない彼女の陰を探しながら溜め息をつく……
 飲み干した缶コーヒーをゴミ箱に捨てようとした時、一枚の紙切れが足に纏わりついた。
 おもむろに拾い上げ、眼を通す。
 「……!」
 見覚えのある文字に僕は狂喜した。
 頬を伝う涙が、それを確信させた。
 そして僕は、走り出した……

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