小説

『ピノキオの鼻のような由真のテイル』もりまりこ(『ピノキオの冒険』)

 谷中樹里ってわたしの名前を呼ぶ声がした。
 振り向かないのにそれは国語教師の袴田だとわかった。

 谷中って呼んだあと側にきて、小さな声でその尻尾先生には見えるよ。
 そう聞こえた。
 振り返ると袴田先生が、笑っていた。
 ピノキオの鼻はなぜ伸びたのかプレゼン、あの宿題ちゃんと済ませておけよ。

 わたしは先生って呼びかけた。

 先生ももしかして、尻尾。
 って言いかけたら、ああそうだよ、俺もずっと学生の頃尻尾はやしてたよ。イジメられてたんだよ、でもいつしか消えていった。

 ピノキオを読むたびに俺は、じぶんの尻尾を想ったよ。俺は嘘をついてないのに尻尾が生えるって。

 谷中、佐伯由真とずっと仲良くしてやれよ。あいつの尻尾のこと俺はずっと見えていたから。それとほんとうに苦しくなったら先生に会いに来るといい。

 わたしは袴田にぺこりと頭をさげながら、由真ちゃんに明日わたしの尻尾のはなしを打ち明けようと思っていた。

 ピノキオの鼻が伸びるのはたぶん心の底で助けてくださいっていっているんだって。すれちがう猫の尻尾をみつめながら、わたしはそんなことを想っていた。

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