テテはふいに気がついたようにトキの腕をきつく引っ張ると、耳元に口をよせて言った。
「もしかして台風のせいで風車が激しく回っていたのをわかっていたんでしょう。ねえ、わざと知らないふりをしていたんじゃないの」
「海はひろいな。海の先にはなにがあるんだろう」
「はぐらかさないでよ」
しつこく腕を引っ張りながらテテは言った。
「いつかテテが俺のお嫁さんになったら教えてあげるよ」
思わずテテは握っていた手を離した。いっきに顔が赤くなっていく。
「ばか」そう言うと、テテは町にむかって駆けだしていったが、すぐに立ち止って振り返った。「一緒に家に帰ろう。もう風車のせいで町が破壊される心配はないんだから」
「そうだな」
トキはもどかしそうに足踏みをするテテの元にゆっくりと歩いていった。
日射しを浴びた崖の上の風車はまっすぐに海に向かってたっていた。