小説

『益荒男の風』牛久松果奈(『雨月物語 蛇性の婬』)

 タツオが消えてから、郁子とは会わなくなった。子供ができたことは風の噂で聞いた。合唱してくれないかとカエルに頼むと、喉を枯らすまで、祝いの歌を郁子の耳に届けた。夕立で、きれいさっぱり恨みっこなしとした。
 箪笥の中のリオのカーニバルはお守りとして一番奥に鎮座している。タツオが教えてくれたこと。いつまでも女性らしくいるんだよと。南風は髪を揺らして、柔らかな優しさで口笛を吹いた。

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