タツオが消えてから、郁子とは会わなくなった。子供ができたことは風の噂で聞いた。合唱してくれないかとカエルに頼むと、喉を枯らすまで、祝いの歌を郁子の耳に届けた。夕立で、きれいさっぱり恨みっこなしとした。 箪笥の中のリオのカーニバルはお守りとして一番奥に鎮座している。タツオが教えてくれたこと。いつまでも女性らしくいるんだよと。南風は髪を揺らして、柔らかな優しさで口笛を吹いた。 4/4 前のページ 9月期優秀作品一覧 HOME 1 2 3 4