「あのやる気のない3人をここまで成長させた君の指導力を本社も高く評価してね。ぜひ君にということになった。君の力でお荷物課の社員をなんとか使えるようにしてほしいとのことだ」
支店長が説明する。
「いや、私にあのお荷物課の社員にやる気を出させるなんて……」
桃井はあわてて答える。心の中で「もうきびだんごを与えるお金もありませんし」とつぶやく。
「まあ、いいじゃないか。もし、うまくいかなくても気にすることはない。どうせお荷物課だ。のんびりやればいい。それにポスト的には本社の課長だ。悪くはないだろう?」
こう言われると、桃井は何も言い返せなかった。
「はい、わかりました」
桃井は力なく返事をして、支店長室を出た。
桃井は自分の机に戻ると、肩を落としてうなだれた。
「なぜ、こんなことに……」
そのとき、部下の3人が桃井のところにやって来て、ある紙を桃井に渡した。そこには「請求書」と書かれていた。
「これは?」
「営業成績で№1になったときに課長が言っていたじゃないですか。ご褒美はそれぞれ何でも好きにやってくれていい。後で請求書をくれって」
犬山がニヤニヤしながら言う。
営業成績トップになって舞い上がっていたときにそんなことを言っていたのを桃井は思い出した。
桃井は3枚の請求書を見て目を剥いた。そこにはとんでもない金額が書かれていた。
「課長、ありがとうございました。またよろしくお願いします」
桃井は去っていく3人の後姿を見ながら茫然としていた。
「きびだんご作戦は成功したんだ。それなのになぜこんなことに。なぜ、俺は桃太郎になれなかったんだ……」