小説

『ロミオとロミオ』鷹村仁(『ロミオとジュリエット』)

 なるべく見ないように心がけてはいるけれども、校庭で龍人がサッカーをしているのをたまに眺めてしまう。
「・・・。」
やはりかっこいい。今だに未練はあるが、断ち切るようにその場を離れる。
「すみません!」
野球部のグラウンドの横を通り過ぎようとしたところで足元にボールが当たった。当たった方向に目をやると野球部の生徒がこちらに走ってくる。
ボールを投げ返す。
「ありがとうございます!」
帽子を脱いで深々と挨拶をする。その顔は日に焼けていて、目付きも鋭く、スポーツに一生懸命励んでいる真剣さを帯びていた。
「・・・。」
走り去る野球部員の後ろ姿を眺めた。
新しい恋の予感がした。

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