小説

『カラカラ・ネーブルオレンジ』室市雅則(『檸檬』)

 二人はぎょっとしたが笑った。
 嬉しかった。
 もっと笑って欲しい。
 私は口の皮を捨て、残っていたもう半分を口にし、実を食べ、先ほどと同じようなオレンジ皮の口にした。
 もっと笑って欲しい
 私は鴨川の土手を駆け上がり、三条通を突き抜け、河原町通へと飛び出した。
 上がろうか、下がろうか。
 私の人生の始まりだ。

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