花子はえいっと手前にいたパンチパーマの男に体当たりした。不意をつかれたパンチパーマの男はうしろにふっとび、その衝撃で、まわりにいた悪者たちもバタバタと倒れていった。まるでドミノ倒しだな、とぼくは思った。
ドミノ倒しでできた道のむこうにひときわでかい男がいた。よく見るとその男には羽がはえており、口には黄色いくちばしがあった。あと体中が無数の獣のように赤く血走った目玉でびっしりとおおわれていた。化物だ!
「よくも、俺の部下たちをたおしてくれたな」といって、その男は岩のようなにぎりこぶしで床をたたいた。地震のように地面がゆれ、その衝撃でそいつ以外の悪者たちはみんな気絶した。なんて破壊力のパンチだ。
「俺がバッド・フラミンゴ・ファミリーの大ボスだ! 覚悟しやがれ!」と男はいった。
ぼくはポンポコサンダーをなげすてて花子とふたりで大ボスの男にとびかかった。ぼくはジャンピングラリアットを、花子はジャンピングトルネードキックをくりだした。
グハアッ! といって大ボスの男はドサリと床にひざをついた。まだ倒れないなんて、なんてしぶといやつだ。びっくりだ。花子をみると、彼女もおどろいた表情をしていた。さあ、どうしたものかな……と考えていると、
「あとはおれにまかせろ!」とエレベーターのほうで声があった。みると、ぼくが先ほどポイとなげすてたポンポコサンダーが立ち上がり、こっちを見て不敵に笑っていた。
「お前、しゃべれるのか!」とぼくはいった。衝撃の事実だ。まさか馬がしゃべれるなんて。これはすごいことだ。
「しゃべれるさ! ひまな時にれんしゅうしていたら、あっという間にマスターしちまったんだ」とポンポコサンダーは流暢な日本語でいった。
日本語ってそんなに簡単なのか、とぼくはすこし残念な気持ちになった。
「そんなことより!」と花子がいう。「あの大ボスをはやく倒さないと、ダランベリー・ブルーベルベット・トワイトニックソース・パンケーキが食べられないわ!」
ヒヒーン!
とポンポコサンダーはいななき、うしろ脚で思いっきり床をけって大ボスの男にとびかかった。そして前脚でキックすると思いきや、ポンポコサンダーは頭を大ボスの頭にぶっつけた。
ゴツン!
大ボスはウッ! とあおむけに倒れ、白目をむいた。どうやら勝ったようだ。
「おれは石頭なんだ!」と誇らしげにいって、ポンポコサンダーはヒヒーンといなないた。
やったね。ぼくは花子とハイタッチした。
それからぼくたちはマルポカ・ビルの地下二階にまとめて置かれてあった東京中の飲食店の材料という材料たちを華麗に救出し、ポンポコサンダーの背中にのせて東京中の飲食店という飲食店のもとへきっちりしっかり送り届けてやった。そしてぼくたちはパンケーキ屋さんにもどった。
「おお、材料を取り返してきてくれたのですね。どうもありがとう!」といってでっぷり腹のおじさん店主は泣きながらお礼をいった。