小説

『海の星と星の海』三角重雄(『星の王子さま』)

 ゆたかな海の島に少年が一人。その少年をゆたかな宇宙の星の海が見ています。海の深い思いはあふれました。
 ある晩、星からの返事が聞けない切なさをこらえていると、王子の心の中で、とつぜん、何かが光りました。
「星さん?」
 王子の島の上に出る星は、ひとつだけ足りなくなりました。けれどもあの星は、王子の心の中で生まれ変わりました。王子が街を歩くと、ふり返るみんな。王子の光が大きくなったからです。
 宇宙の星の海のセイがまたたきながら、
「ソプが見えなくなってずいぶん心配したけど、いたね」
 と、いいました。
 リオスがなごやかに光って、
「よかった…。海の惑星の王子といっしょに生きてるね」
 と返事をしました。
 星の仲間たちは、こう話しています。
「日が昇る島が光るようになって、海の惑星が美しくなったね」

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