明日の新聞はすごいことになってるかもしれない。これがそういう代物ならきっと科学捜査班は俺を犯人に見立てるだろう。引きこもりのローンウルフで、かつスーサイド・ボム・アタック的な?
俺は息をのんでおそるおそるその箱に耳を近づける。時計の秒針の音がしないかどうかに耳を澄ませる。
しんとしていた。音は刻んでいないみたいで、たちまちさっきまでの妄想が俺をとりまきながら、こっぱずかしさと共に木っ端みじんに吹き飛んだ。
箱をそのままにしておく選択も、たしかにあったけど。
ひまじゃないか。こんな空間でなにもすることがない。そんなことはじめからわかっていたけど。それに家に帰ってからこの箱のことがきになるのも嫌だった。
箱の上の布に手をかけて、取り外そうとした時、何か箱のなかに気配を感じた。なにかわからないけれど、無機質なものではないなにかの存在が指先に届いた感じがしたのだ。
なにかいる。
そう思ったせつな。箱の中でかすかに、クゥという声がした。
生き物がそこにいる。俺のいちばん苦手とする分野。有機的な物体から逃れたくて引きこもったのに。久々にシャバに出て対面するのが、得体の知れない生き物だなんて。
どばっといきます。がばっとあけます。と、声にすると俺いさぎよく布をとっぱらった。
箱の中にはもうひとつの容器が入っていた。鳥かごだった。
そしてその中には雀みたいなちいさな鳥がいた。鳥かごのステンレスみたいな柵に、ひらひらとした紙がくくりつけられていた。
ちいさな手紙のようなもの。
<あなたに飼っていただきたく、ここに置き去りにしてしまいました。文鳥です。むずかしくはないのでどうぞ飼ってやってください。エサも入れてあります。かわいい声で鳴きますよ。鳴き声によく耳をすませてみてください。みしらぬあなたがどうぞいいひとでありますように。Be Happy!>
なにこれ?
文鳥? って。まいったな。みしらぬあなたがってなんなんだよ。自問自答する。みしらぬあなたはあなたもでしょ。どこがBeHappyなんだよ!
ちいさな鳥と対峙している。たぶん俺だけなんだろうな。忘れ物付きのゴンドラに乗っているのは。こうやって妙なクジひいちゃうんだよ、いっつも。
そう呟いていたら、視線を感じた。小鳥の視線だった。首をかしげてこっちを見ていた。