小説

『アケガタ・ユウガタ』もりまりこ【「20」にまつわる物語】

 日本語にすると<妙なる屍は新酒を飲んだ>になるらしく。
 あの誰もがやったことがあるであろう遊びには<カターヴル・エクスキ たえなるしかばね>という不穏な名前がついているらしい。

 アケガタがページをめくりながら、これこれいいんじゃない? って呟いた。
 一応さ、ことばで人を笑わせたいわけじゃん。笑われるんじゃなくて、笑わせたいだろう俺たち。今は程遠いけど。だから、こういうのいいんじゃねぇ?
 どういうこと?
 ユウガタがぽかんと尋ねる。
 ことばを磨くんだよ。ふたりで。遊びながらさ。ルールとか決めて。
 ルール? ってマジ? つくるの?
 ユウガタが、ルールはいらんでしょうって思いながら軽く抗う気持ちで伝えたけど。アケガタは乗り気になっているらしく、なにかを思いついた時の癖、若干、右の眉だけがあがる表情をした。
 決まりは、ひとつ。
 なに? 遊びなんだから軽くいこうぜ。
 20ワードにするべ。
 ユウガタは、ふたたびぽかんとした。何言ってんの、この人? って目で見上げたけど、とにかくアケガタは、デビューが決まった時よりもうれしそうな顔をして口角くっきりあげて笑ってた。

 いつ、どこで、だれが、なにを、どした。

 ためしにふたりでやってみた。
 アケガタのルールでゆくと、おのおのが4ワードしか使えないことに気づいた。
 できるべ。
 アケガタはドンウォーリーみたいな感じでいなすとチラシの裏の白いところを選んできて、折り目を定規でつけるとびりびりと長方形に切って、ほいってユウガタに渡した。
 ま、熟考はなしにしようぜって言いながら。
 遊びだからね。
 アケガタが念を押すと。

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