小説

『ヴィーナス』橋本和泉(『天女伝説・羽衣伝説』)

 そして、不死に近くはなるが、不老では決してない。男は400歳まで老い続けて、そして、体の限界が来ると、朽ちて消えていった。
 天女はさらに続ける。
 年を取った私を愛した男はいなかった、ただ、あなたは少し性癖が特殊だ、と。

 老女は再び男を見つめる。男は60過ぎの姿をした老女を前に頬を赤らめる。
 老女は笑う。天女が笑う。
「あなたのような人はいない」

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