「三人とも聞いてくんろ。実はおら、昔話の主人公何かじゃねえだ。この話のオリジナルキャラだよ。あっあっあ、黙って最後まで聞いてくんろ。おら今もいった通りこの話のオリジナルキャラにして、そしてこの話の主人公だで。あんたら三人は全員わき役ってことになるだよ」
「何!」
「何ですって!」
「何と!」
驚く三人に石太郎は話し続けます。
「嘘だと思うなら、この話の一番最初の上んとこに『石太郎』ってタイトルが出ているから見てくるといいだよ」
「本当なの?ちょっと私この話の最初までタイトルを見に行ってくるわ。ただ、同時に絶世の美女が二人存在するのはまずいから顔を置いていくわね」
顔の無い女となったかぐや姫がこの話の進行方向とは逆に歩き始め、やがてかぐや姫の姿が見えなくなると、桃太郎と浦島太郎のダブル太郎がこれまた太郎である石太郎を問い詰め始めます。
「家来のお前が主人公?いったいどういうことだ」
「儂も納得できん。村人①が主役など前代未聞」
「おら、村人①ではねぐ石太郎だ。まっ、このネタはもういいだよ。桃太郎さん、あんだ自分でも言ったでねが。この物語は昔話ではねえって。ありゃ、正解だっただ。この話はあんたらの話を基にした二次創作で映像化を目的としているだよ」
「映像化だと。そりゃ無理だろ。容姿を形容できないかぐや姫が主要な登場人物にいるんだからな。それに、これだけ物語のルールを破壊したんじゃそもそも読み物としても成立せんだろ。」
桃太郎妙に冷静になって石太郎に訊きます。
「何とでもなる筈だとの事だでよ。ただ、鬼退治をして物語の決着だけはつけたいそうだでよ」
「おいおい。事だでよって何だ?お前の考えじゃないのか?誰の考えなのじゃ」
浦島太郎が訊くと、石太郎ではなく桃太郎が答えます。
「何となく分かってきたぜ。浦島さん、俺たちゃ登場人物って事さ。でもよ石太郎。俺ぁいろんな事が何故か急に、多分ご都合主義でだろうが、理解できたんで言うんだが、この話に決着をつけるのは難しいんじゃあねえか?残りの文字数も限られているんだろ?まさか、いきなり鬼ヶ島に着きました。鬼をやっつけましたって訳にもいくめえ」
「おー、さすがは桃太郎さんだで。素晴らしい理解力だんべ。んでも心配はいらねだ。こんな手もあるだよ」
言い終えるなり石太郎、キッと虚空を睨むと、読者であるあなたと目線が合ったのを確認し。