「あら、でも確か最後は鶴になって助けた亀と夫婦になり幸せに暮らしているはずじゃ」
「おら、村人①ではねぐ石太郎だ」
「いや、それがお恥ずかしい話しですが、つい先日離縁しましてな。なぁに離縁と申しても元より鶴と亀。役所に婚姻届けが出せるわけもなく、内縁関係であったのを解消したわけでしてな。それで人間に戻って最後にもうひと花咲かせたく思案しておりましたところ、桃太郎殿にかぐや姫殿、村人①さにんお会いしたという次第です」
「そうですか。では、きび団子をどうぞ。一緒に鬼退治をしましょう。是非私のサポートをお願いします」
「そうね。年寄りの崇拝者というのも私の魅力を引き立てるにはいいわね」
「おら、村人①ではねぐ石太郎だ」
桃太郎からきび団子を受け取り、口に放り込みゆっくり咀嚼し飲みこんでから浦島太郎が話し出します。
「サポートとは?桃太郎殿。異な事を申されますな。先程も申し上げました様にもうひと花咲かせる為の此度の仕儀。桃太郎殿に、かぐや姫殿と村人①さん。あなた方が儂の助太刀をするのが道理と存じますが」
浦島太郎の言葉に桃太郎がまたしても鬼の形相となります。
「おい!こら爺ぃ!ふざけた事を吐かすんじゃねえぞ。人が下手に出てりゃ付けあがりやがって。手前ぇ、今きび団子を食ったろうが。そりゃ、俺の家来になるのを承諾したってことだろうが!俺に従って鬼退治を手伝いやがれ!」
この桃太郎の言葉にかぐや姫が反応します。
「きび団子を食べたら家来!?あなた何を言っているの?私に呉れたきび団子は貢物じゃなかったの?」
「おら、村人①ではねぐ石太郎だ」
「えぇい!うるさい!黙れ!かぐやお前、俺の家来になりたくてきび団子を呉といったんじゃねぇのか!それと石太郎!村人①でも何でも構わねえだろうが。所詮手前ぇはその他大勢何だからよ!」
自分勝手で気の短い中小企業の社長にも似た気質の桃太郎、激怒します。が、かぐや姫に浦島太郎もメジャーな物語の主人公を張っていたプライドがありますから一歩も引きません。また、この時四人の脇を顔の無い女が通り過ぎて行ったのも誰一人として気付いていません。
「何と!この様なきび団子一つで人を家来とし、鬼退治をさせるとは。あまりに阿漕。よいか桃太郎殿。労働の対価は金銭で支払わねばならぬと法でも決められているのですぞ」
「何を吐かしやがる。この爺ぃが。こりゃ桃太郎セカンドシーズンという昔話の世界だぜ。つまり、俺が法だ!分かったか」
この言葉にまたもやかぐや姫が反応します。
「あら、桃太郎。何を勘違いしているの?これは、かぐや姫リターンズというお話で、あなた方が、私からの鬼を退治して欲しいというリクエストに応えて悪戦苦闘し、一人ぐらいは命を落とすという物語よ。そして、最後は私が皆に惜しまれつつ月に帰るのよ。素敵なお話でしょ」