「と、いうわけで私にもきび団子を寄越しなさい」
かぐや姫に言われ、呆気にとられていた桃太郎が機械的にきび団子を渡すのを見ながら石太郎が呟きます。
「おら、モブ太郎でねぐ石太郎だ」
こうして、ここからは桃太郎と石太郎にかぐや姫の三人旅と相成りました。
しばらく歩くと桃太郎が言います。
「なあ、猿の代わりに石太郎。犬の代わりにかぐや姫が現れたって事はキジの代わりも何かの物語の主人公か現れるんじゃあないか?」
「あら、そうかしら。それだとこの話の世界観だと意外性がないから、逆にキジが出てくる可能性もあるのじゃないかしら?」
「おらは狸が出てくんじゃねえかと思うだ。カチカチ山の狸かぶんぶく茶釜の狸あたりが、物語の主人公だし、動物でもあるからサマにもなると思うだよ」
三人がわいわい話していると、現れたのは総白髪に長くて白い顎鬚をたくわえたお爺さんでした。お爺さんが一行に声を掛けてきます。
「これは、これは。桃太郎殿にかぐや姫殿ではないですかな?もう一人の方は、んー。村人①さんですかな?」
「いかにも俺ぁ桃太郎だ」
「あら、私がかぐや姫ってよく分かったわね」
「おら、村人①ではねぐ、石太郎と言いますだ」
「おお、やはり桃太郎殿でしたか。その有名ないでたちをみれば一目瞭然。村人①さんが掲げている幟にも日本一と染め抜かれてありますし、日本一といえば桃太郎さんに決まっている。それに隣の女性は今まで見たこともない絶世の美女ですから、これはもうかぐや姫殿に決まっております」
「なかなかものの分かっているご老人だ」
「そうね。審美眼もあるみたいだし」
「おら、村人①ではねぐ石太郎だ」
ところで、と桃太郎が尋ねます。
「このタイミングで現れたという事はあなたもこの一行に加わり鬼退治に行くべき存在なのでしょうが、お名前をお教え頂けますでしょうか」
相手が年配とあり、また、虚栄心をくすぐられ、いい心持ちになった桃太郎改まった口調で話し掛けます。
「おお、これはご無礼仕った。儂は浦島太郎という者です。桃太郎殿に、かぐや姫殿、村人①さん以後お見知りおきを」
「お見知りおきも何も浦島太郎さんといえば、この桃太郎に次ぐ昔話の有名人じゃないですか」