小説

『神、再び来たりて』十六夜博士(『ヤマタノオロチ』)

「はははっ、皮肉に聞こえましたかな。それは失敬。自戒を込めて申したのです。コロニー・Gは野心家で血気盛んなものが多いのです。ポセイドン、ハーデス……地球での利権争いにならないように気をつけねばと思っているところですよ」
 イザナギはその通りだと思った。
「おっしゃる通りです。我々が利権争いや仲違いをしていては、残留地球人との共生もうまくいきますまい。我が家もアマテラスという小姑みたいな娘がおります。スサノオのやり方に腹を立てて、喧嘩をしないといいが……」
 ゼウスは、ははっと、大きな声で笑った。
「『まともな国に立て直すから、スサノオ、あんたの国をあたしに譲れ!』なんてね」
 ゼウスの冗談に、イザナギは、「まさかと」と大きな声で笑った。
「人類が二度とコロニー生活に戻らないよう、祈るばかりですな。3万年後、我々の子孫が再度コロニー移住をし、さらにその3万年後、新たな神にならぬよう努めましょう」
 ゼウスは最後に言った。
 イザナギは、「いかにも」と言うと、ゼウスと握手をした。コロニー・Gとコロニー・Jの帰還地は地理的にかなり遠い。もうゼウスと会うこともないかもしれないと、イザナギは若干の寂しさを感じた。
 そのとき、イザナギはふと思った。
(今後、自分たちの地球移住と共に、各地で神話が生まれるのだろう。だが、我々が最初の神なのだろうか……我々にも神話がある……ということは……我々の神話の神もコロニーから来たとか……)
「まさか、我々が2度目、3度目ということもなかろう……」
 イザナギは、証明しがたい自らの妄想を打ち消すべく、独り呟いた。

 地球の新しい神話が始まる……

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