小説

『メートル』大澤匡平

「聞きたいことは1つだけにして。」
 背中までも透けた僕は、脳みそをグルグルにかきまぜて数秒だけ悩んだ。
 “彼氏という心臓”“勉強という装い”“私生活という肌”
 僕が出した質問は、空気のふりした心臓だった。
「何で、卒業アルバムの制作なんてやろうって思ったの?」
 幸せそうな顔で、彼女は笑う。
「この輪に入りたかったから、ずっと。」
 追っていた靄は一瞬で晴れ、単純で不憫な女子が目の前で笑っている。

 坊主にも小僧にもなれぬ僕は、恋人も作らぬままに春から大学生。

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