「聞きたいことは1つだけにして。」
背中までも透けた僕は、脳みそをグルグルにかきまぜて数秒だけ悩んだ。
“彼氏という心臓”“勉強という装い”“私生活という肌”
僕が出した質問は、空気のふりした心臓だった。
「何で、卒業アルバムの制作なんてやろうって思ったの?」
幸せそうな顔で、彼女は笑う。
「この輪に入りたかったから、ずっと。」
追っていた靄は一瞬で晴れ、単純で不憫な女子が目の前で笑っている。
坊主にも小僧にもなれぬ僕は、恋人も作らぬままに春から大学生。
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