小説

『白梅、紅梅』冬夜(『しらゆきべにばら』)

「大丈夫よ…梅の花が咲いたら、また思い出すから」
「あ」
 小雪が振り向くと、きれいにまとめられた髪に咲く、小ぶりな白梅の花が匂い立った。
 控室のドアが開いて、係の人が迎えに来る。小雪は私の手を離れて、新たな世界へと旅立っていった。

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