何なりとお申し付けください。
訊きたいんやけど、俺、裸ちゃう?
大臣は耳をピクリと動かしただけで、頭を下げたままでいます。
王様も大臣の反応を待ちますが、大臣は一向に頭を上げる様子がありません。
沈黙が衣装室を支配しました。
その空気に耐え切れず、王様は頭を掻きました。
なーんちゃって。驚いた?変なこと訊いてもうたな。
相変わらず大臣は頭を下げたままです。
いえ。ただ・・・
ただ?
王様は決してお一人でありません。民も王様を慕っております。
ほんまに?
はい。それでは。
そう言って大臣は顔を上げることなく去って行きました。
再び一人になった王様は大きく息を吐きました。
めっちゃ空気重かった。ごっつ気ぃつこてたやん。
分かってはるんやろうけど、言えへんやろうな・・・。逆だったら俺も言えへんもん。
だってあれだけ、みんなが口々に絶賛したら『俺だけ見えてへんとか思われたらヤバい』って思うもん。そいで、俺も言うに言えなくて、ノリで『ええな』とかアホみたいに言うてもうたのが決定打やったな。俺が言うたら、他のみんなも『何にも着てないやん。裸やん』って言えへんもん。
俺だけに見えへんとかじゃなくて、やっぱり裸やろうな。
王様は手のひらで全身をさすりました。
寒いもん。さぶいぼ出とるし。
どないしよ。やっぱり服着よかな・・・。そういやサラの肌着あったから、せめてそれくらい着とこかな。
あのペテン師のボケたちはほんまシバくとして、こうなったら誰か言うてくれへんかな。
でも、俺も一国一城の主やし、この土壇場でも乗り切れるかの試練のような気もするし。
王様は一人で頷きました。