酒のせいで判断力が鈍ったのか。いや、判断力は元からなかった。幼いころから私は、兄の真似をしては、その実力差から失敗を繰り返し、両親を困らせた。兄は笑って「いつかできるようになるさ」と言ってくれていたが、結局、私が兄に並ぶことはなかった。
昔から、私は何もできないだめな人間だったのだ。
「……おい、どうした？」
何も言わなくなった私に対し、宮瀬が声をかける。
「何だか、すべてにおいて申し訳なくて……」
私の謝罪に、宮瀬はため息をつく。
「そういうのは、取れてから――」
「違う」
そうじゃない。
言いたいことは、そんなことではない。もっと、ほかの……、それこそ私がウサギ頭をかぶることになった根本的な問題だ。
「……春斗は、本当にあの高校でよかったのか？」
その言葉に、宮瀬はすべてを察したようで、気まずそうに私たちから顔をそらした。
「本当に……って？」
春斗が不安そうな視線を返す。
私の胸にはいつの日か抱えた痛みが戻ってくる。
「本当はもっと行きたい高校があったのに、無理に志望校を変えたような……、そんな気がしたんだ」
進路の話をするとき、春斗はあまり深く掘り下げようとしない。藤川夫妻への答えと同じように、友人がいるからと言っているが、その裏には何か隠していることがあるように思えた。
「兄も同じだった。自分が私立に行っては、私の学費が払えなくなると言って、進路を変えた」
本来、兄は隣町にある私立の進学校を目指しているはずだった。でも、それをやめて、地元の公立高校を選んだ。すべて弟である私に気を使った結果だった。
その道を、春斗もたどっている。兄が遺してくれたお金は、何とか大学の入学金までが払えるくらいだ。しかも、その計算は中・高の両方を公立にし、そのほかの出費もかなり抑えた場合である。厳しいことに変わりはない。
私にもっと稼ぎがあればよかったのだが、給料の大半は二人分の生活費に消えている。
今更、何かが変わるわけではない。それでも、訊かずにはいられなかった。