小説

『銀杏並木の最後の一葉』渡辺明日翔(『最後の一葉』)

 新たに出会った美女と話し込んでいたBが我に返って、Aの方を見ると彼は落ち着いた雰囲気の女性と話しているようで、そのなんとも和やかな様子から、自らの本願が達せられたことを悟った。こうしてこの珍妙なクリスマスツリーが、後には大学当局によって取り壊されてしまうのだが、幾つものカップルを作っていたその頃、この騒ぎの立役者であるCは学生部にいた。これは、彼がツリー制作に時間を割いたあまり進級に必要な単位を落としてしまって、もう一年の留年が決まり、それがついにK大学の留年が可能な年数を越えてしまったことから退学しなければならないという旨の通告を受けたためであった。こうして彼はひっそりとキャンパスを去ったのだが、後にその自己犠牲が讃えられ、Cはついに学問の世界から完全に脱落したにも関わらず、助教授から教授と呼ばれるようになった。

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