「いいよ、いいね。そういうすぐ怒ったりする所」
(くそう。完全に僕のことを馬鹿にしているだろ、この子)
女子高生にからかわれ、しかし、悔しい事に返す言葉が見つからない。
「私ね、あなたと話がしたかったのよ」
彼女はその場でピョンピョンと飛び跳ねはしゃいでみせる。
「だってさ、みんな人間である事の意味を忘れてAIの飼い犬になっているんだもん、つまんない」
「・・・・・・」
嫌な言い方だったが、そうでは無いと言い切れない自分もいた。
「なんで彼奴らが私達を観察していると思う?それって、さっきのあなたみたいにそれが正論だと分かっていても腹を立てたり、時には反論したりするからよ。ねぇ、正しい事しか選択出来ない彼等には予想し難い反応だし、そこから生み出されるものが何よりの魅力だと思わない?」
「・・・・・・まぁそうかもね」
「という事は、あなたみたいに感情の起伏が如実に分かり、一見無駄にも思える行為に心を満たされる人間こそ理想的な人間である、と言えると思うの、私」
このやたら生意気な少女は、何を分かったフリをしているんだ、と言いたくなるのを僕はぐっと堪えた。
(キミなんかに言われなくても、僕は無駄だと分かって行動しているんだけどね)
何も言わない僕を、彼女は自分の意見に同調したと取ったのだろう。満足そうに勝手に頷くと、僕の腕にその細い腕を絡めてきた。
(なんだ?!いきなり!)
「ねぇ、すぐそこにすっごく美味しいチェリーパイのお店が出来たんだけど」
「はぁ?」
彼女の唐突すぎる会話に戸惑いを隠せない。
「私の話、気に入ったでしょ。だからもっと話しましょうよ」
「気に入ったでしょって、それ自分で言う台詞じゃ・・・ってうわっ」
こういう時の女子の強引さに勝てるものなど何もない。まだ話している途中だというのに、僕を連れてどんどん進んでいく彼女。僕は抵抗する術もなく引っ張られるままに、ショッキングピンクと白のストライプ柄が目を引く可愛らしいお店へと連行されてしまった。
「ミルクシェイクにチェリーパイ、ストロベリーサンデーです」