小説

『欲しいの因果』相原ふじ(『星の銀貨』)

 「それとこれとは…へえぇ?さみしい!」
 「ええ?そんなに?」
 「うわあぁ、さみしい!」
 「まあ、考えたら結構長いもんね、一年くらい?」
 「わあぁ、さみしいぃ」
 「原田君のときこんなに寂しがってなかったじゃん?」
 「ええ?そうだったかな、あぁあさみしい」
 「はは、なんでそんなにさみしいの?」
 「わああ、さみしい…」
 「んー、なんでさみしいの?」
 「はああ、さみしぃ」
 「…なんで~?」
 「…さみしいい」
 ああ、これは痛々しかった。寂しがることに専念しちゃって。これでアピールのつもりだったのか。わざわざ話してくれていたのに。どうして辞めるの?とかちゃんと話を聞けばよかったものを。
 皿に移していく。転がるウインナー達は目一杯膨れて、蒸気をまとっている。
 好きな男の子にはさみしいとしか言えず、好きでもない男の人にはさみしいとばかり言われる。
 ああ、救われないなあ。
 塩こしょうを振りかける。
 欲しがらないで手にできるとどこかで固く信じちゃっているのか。弱いふりして頑固なだけだわ。
 静観主義を気取っちゃって。もらえるもんだとはなから疑わないのは、うっかり欲しがりすぎちゃうよりもずっとイタいのかもしれない。

 なんでさみしいか?みなさんお分かりでしょうに。

 弱さを笠に着るのも大概にしろ。
 ウインナーをバリバリほおばる。

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