「いや、本当に聞こえてるんだって。ほら、小田巻さんだって」
「はいはい。じゃ、またね」
村尾さんが話を切ってしまいました。一体なんの話なのでしょうか。
「あの、村尾さん」
「ん？」
「佐伯さんが言っていた、小田巻さんがどうのこうのってなんなのですか？」
「あー、あれね。なんかね、この近くで音が聞こえるんだって」
「音？」
「なんていってたかな。なんか工事の音？ カナヅチかなんかの音が聞こえるんだそうだ」
「はあ」
そんなの、近くで工事をしているから当たり前の話じゃないですか。
「で、その音を聞くとやる気を失くすんだそうだ」
「やる気を失くす？」
「二〇四号室に小田巻ってのが住んでるんだけどさ。いや、住んでたのかな。そのへんよくわからんけども」
「はい」
私も今まで一度もお会いしたことはないですけど。
「そいつも言ってたんだ。音が聞こえるって」
「ほほう」
「多分怠けたいだけの言い訳だろって思ってんだけど」
「で、最近その音が佐伯さんも聞こえると言っていると」
「まあ、そんな感じ」
あのやる気のなさは生まれながらのものではないのでしょうか。
「んなわけあるかって話だよな」
「はあ」
しかしその工事の音は私にも聞こえています。私もそうなってしまうんでしょうか。いやいやまさか。ははは。
もう冬ですね。寒いです。知ってますか？ 大学ではトイレで食事しなくても空いてる教室っていっぱいあるんですよ。もしかして友達って作ろうとしないとできないんでしょうか。え、そんなことないでしょ？ いままで作ろうとしたことなかったのでよく分かりませんが、友達作るのって大変なことなんじゃないでしょうか。