卯三郎がこの不思議な話を、ごく当たり前のことのように、すらすらと話すので、父母たちも兄姉もびっくりしてしまいました。そうして、それからどうしたのかと、かえってまわりの者が興に乗って訊くと、卯三郎の松吉はいよいよ熱心に語りつづけました。
大勢の人が棺桶を葬りに山へ行ったときも、自分はそばにいた。棺を穴に落とし入れたとき、その音の響いたのが心にこたえて、今でもはっきり覚えている。
それから家に帰ってきて、部屋の中にいたが、人にものを言いかけても誰もこたえない。そんなときに、
すると、どこだかわからないが、きれいな草原があって、自分はそこで、知らない子どもたちと遊ぶようになった。それからも、ときどきは入間川の家へ行ったが、やっぱり誰も気づいてくれない。親たちの声が聞こえ、経を読む声も聞こえ、食物が供えてあったが、べつに食わなかった。
そうこうしているうち、前に言った白い髪のおじいさんと賑やかな通りを歩いていた。川越の町だった。すると、おじいさんはこの家を指差して、「こんどはあの家にはいって、あの家の子どもになって生まれておいで」と言う。そこでおじいさんと別れて、その家の窓のすきまから中に這いこんだ。そしておっ母さんのお腹の中にはいっていた。自分は苦しい感じはなかったが、おっ母さんが苦しそうだと思われるときは、脇のほうへ寄っていたことを覚えている。生まれてみると卯三郎という名の赤ん坊になっていた。
そこまで聞いた父母は、気味悪くなってきました。母親のお腹の中にいたことまで覚えているのですから。
「寺の和尚さまの
母親のセイは、自分の腹を痛めた子が他人の生まれ変わりであるというのが気にかかり、卯三郎を案内にたてて、入間川をたずねてみることに決めました。
「あたいのあとについて来ればその家に行けるよ。道はよくわかっているから」
こうして翌日、母の先に立って歩いていった卯三郎は、迷うことなく巳之助とその妻のヒデのもとに行き、なつかしそうに声をかけました。