古屋。
若い夫婦が、古い家を購入して、改築して住んでいる。
古屋の魅力については、広く知られている。
どれもが該当するわけではないのだが。
で、以前住んでいた、すでに物故者の夫婦。
今住んでいる、夫婦。
以前の夫婦は、居間でコーヒーを飲みながら寛ぐのが、とても気に入っていた。
その以前に居住の、物故者夫婦。
「かちかち山、よね」
「そうだね」
「私、この話嫌い」
「へー、どうして」
「だって、残酷だもの」
音楽が流れている。
コーヒーカップが、皿にぶつかる音がした。
同じ空間に同時に、夫婦が寛いでいる。
全く、気付かぬどころか、それぞれの空間は改築前の空間であり、改築後の空間なのだ。
それも、一組は物故者。
勿論、そんな事は普通にはあり得ない。
でも、普通ってなんだろう?
我々が目にしている普通に視覚に入っているのは、そもそも幻覚ではないのだろうか?
誰が違うって言える、いや断言できるのだろうか?
え、そうだろう。