小説

『灯火』桜吹雪(『ヘンゼルとグレーテル』)

あの幼い可愛い女の子がこんな行動を取るくらいの想いに私は今まで気付かなかった。
自分が楽しいと思ってしまうあまりにこの子たちの心を見過ごしてしまっていた。
そうじゃない。
気づいていたのだ。
でも仕方ないと、病気が治るまでは我慢も必要なのだと私は勝手に押し付けていたのだ。
遠ざかる意識の中でケーキを頬張って嬉しそうに笑う二人の顔が揺れた。
触れたいと願い伸ばした腕に見覚えのある赤い発疹が浮かび上がっている。
その向こうで最期に目に映ったのは─

 
森の魔女が死んだ。
噂は流れ、人々は森に入るようになった。
いつしかそこへ小さな村ができ、お菓子の家の跡地には憩いの広場が出来たという。

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