太郎は砂の上で瀕死になっている亀を見て、ぎょっとした顔をした。
「なんで、こんなことするの?」
「あんたに関係あるの?」
「だめだよ。こんなことしちゃ」
「やめてほしい?」
「あぁ」
「じゃあ、買ってよ。1000円でいいからさ」といって浦島先輩は亀を踏みつぶした。
浦島先輩はしゃがんで、砂に染みた亀のよくわからない白い粘液を舐めながら太郎を見上げた。
「1000円」
太郎は青ざめている。バカだ。浦島先輩に絡むなんて。
「これで」
「5000円だよ?」
「それで、いいから。じゃあ」
そのまま去っていこうとした太郎を後ろからげんこつで数回殴り倒して暴行を加えた浦島先輩は太郎の髪をごっそり抜いて、できた歪な円形の禿げに太郎の鼻血をインクにして亀の絵を書いてから財布の中身を確認した。
「ほんとに5000円しかないんだ」
浦島先輩はとても悲しそうな顔をしながら財布に火を点けた。
「へぇ。あんたも太郎っていうんだ」浦島先輩は燃えていく太郎の免許証を見ていった。その火で煙草を吸って、太郎の口を灰皿にした。
「おい、いこうぜ」と浦島先輩がいって、俺たちはついていった。
俺はもうすぐ帰らないといけない。寝たきりのおじいちゃんに寝返りを打たせてあげないといけないからだ。でも、帰りたいなんて浦島先輩にはいえない。
「あっぶね」浦島先輩が大きな石につまづいた。
俺はその石を拾って、握りしめた。今なら、浦島先輩を排除できるかもしれない。
「おでん」と浦島先輩がいった。「食いたくね?」
「そうっすね」と俺たちがいった。「まじおでん食べたいっす」