ぎゅるるる、と、ラーメンを前にして再び彼女の胃の中の怪物が叫び声をあげた。
「申し訳ありません」
「沖になさらず、食べてください」
「それでは会話の途中ですけど、失礼していただきます」
「どうぞどうぞ」
和、洋、中と数あれど、でも私はやはりこのラーメンが一番好きですよね。彼女はそう言いながらずるずると麺をすする。味は彼女の好きな醤油味。別段おかしいことはないし、むしろ店で出されても普通に代金を支払えるような出来の味だ。
「ふふふ。おいしそうに食べますね」
男は優しい目で笑った。
「お恥ずかしい限りで。ところであなたは一体どれだけ地球に滞在する予定ですか?」
「地球の暦でいうところの五億年でしょうか」
「なんと。長生きですのね」
「いろいろと地球の生命と異なる点が多いのですよ」
それもそうか。彼女はラーメンのつゆを飲む。。
「でもまあ、楽しめそうだなあ、地球」
「そんなに楽しみですか、地球」
「ええ、あなたのおかげでね」
「それは光栄ですわ」
「ええ。そうだ、これも何かのご縁でしょう。あなたはペットとして最後まで育ててあげますよ」
「ペット……?」
「ああ、楽しみだなあ地球……そうだ、もう一回押そう」
そして男性が椅子の前についている赤いボタンを押すと、バスが止まった。
しばらくすると、宇宙服を着た人間がバスに乗ってきた。
彼女と同様に。