今、未来を知る様な事は押し並べてただの見世物になっている。見られて面白がられ、そんなものがあっても無くても構わない、まあ、あった方が面白いモノとして。
では、そんな中で唯一人、『見世物』に、真実と重さを感じていたら、どうでしょう?
自分にとって、『本当だ』と思われる予知をしてしまう人間は、
どれほどおかしいものでしょうか?
なにかを本当に伝えようとするって難しいですね。何か文体までよそよそしくなっています。思えば、私は昔から私の言うことは絶対誰にもまともに受け取ってもらえないとどこか諦めていた所があります。諦めていなければ、他の人からおかしな眼で見られても誰か一人は私のことを信じてくれる人がいたでしょうか。
私は本当のことを書いています。信じる、信じないは貴方に任せます。
そのうち、お父さんの不正の容疑は晴れます。今の辛い時期もそのうち終わりますから安心して下さい。そのことで私は死ぬわけではありません。
ただ、どのみちお父さんには激しく失望すると思います。この遺書に同封した書類と手帳を見て下さい。貴方も、色々なことを考えざるをえないでしょう。
私は未来だけを視続けることしかできませんでした。そして、私はずっと未来に振り回され続けてきました。それ故に私は死んでいきます。貴方が責任を感じることは一切無いです。
未来しか視えない私が過去を語るなんておかしな話でしょうから、私は私のこれまでを語りません。どうせ、もう語るべき過去なんて私の中では燃え尽きて空っぽですし。
願わくは、貴方が信じてくれることを』
【カッサンドラ】
ギリシア神話の登場人物。悲劇の予言者。トロイア戦争で滅びたトロイアの王女でトロイアの英雄ヘクトル、母が身籠っている時不吉な夢を見たため一度は捨てられた、絶世の美女ヘレナを攫いトロイア戦争を招いたパリスの妹。
太陽と理性の神アポロンに想われ、予言の力を授けられるが、アポロンが自らの元を去る未来を知りアポロンの愛を拒んだため、カッサンドラの予言は絶対に誰からも信じられないという呪いをかけられる。
カッサンドラはパリスがトロイアに滅亡を齎す事、またトロイの木馬がギリシア側の策略であることなどを予言したが誰からも信じられなかった。
カッサンドラはトロイア戦争後、ギリシア側の戦利品としてミュケナイの王アガメムノンのものになる。その後、アガメムノンを憎む彼の妻の手でアガメムノンと共に殺される。
カッサンドラの双子の兄ヘレノスも予言の力を持っていたとされる。彼はトロイア戦争後も生き延びた。