その三日後、サルタの死体が発見された。
「え?」マスターは飲みかけのバーボングラスを宙で止めたまま言った。「死体?」
「そう。サルタは死んだ」女は四杯目の酒をまだ一口も飲んでいなかった。
「申し訳ございません。取り乱しました」
「衝撃の展開よね。でも事実。何の前触れもなくサルタは死んだ。死体は皆が住んでいる自宅で発見された。胸をナイフで一突き、即死だった」
「理解に苦しみます」マスターは一口バーボンを飲んだ。
「自殺か?他殺か?外部の犯行か?内部の犯行か?」女は少し間を置いてから言った。「そんなことを考える間もなく、犯人はあっさり見つかった」
「お客様。少し待っていただいてよろしいでしょうか。心の準備が必要です」そう言ってマスターは深呼吸した。
「マスター。こういう血なまぐさいの苦手なの?」
「得意なかたが奇特なのかと」
「母性本能くすぐるタイプね」
「ご冗談を」
時計の針は一時を指していた。いつの間にか、地響きのような豪雨は止んでいた。「台風の時って一瞬だけきれいに晴れたりするのよね。この束の間の静けさって妙に寂しいと思わない?ウサギなら死んじゃうかも」
「かもしれません」
女は小さなため息をつき、間髪入れずに言った。「犯人は娘だった」
マスターは天井を見上げながら大きなため息をついた。
「娘が自首したの。私がパパを殺しましたって」
「パパ?サルタさんが父親だったのですか?」
「と、すんなりまとまる話じゃないんだけど」
「どういうことですか?行方不明になってる間に殺したのですか?」
「二つ問題があるの。一つはそのパパという言葉が実のパパと義理のパパ、どちらを指してるのか分からなかったこと。もう一つは彼女には完璧なアリバイがあったこと」