「そう。この遺書が謎だらけなの。ママを殺したとはどういうことか?そもそもどうしてママが死んでいることを知ってたのか?パパとは誰か?結局いつ誰がサルタを殺したのか?」
マスターは頭の中で話を整理してから言った。「でも少なくともサルタさんが父親だったのでしょうね」
「そう思う?」
「そうとしか考えられません」
「でも調べる方法はない」
「DNA鑑定はしなかったのですか?」
「マスター、忘れてるかもしれないけど、これ昔話よ。そんな科学技術あるわけないじゃない」笑いながら女は言った。
「…確かにそうですね…」
「そんなマスターの謎を解いてくれるかもしれないのがあの三人」
「解いてくれますか!?」
「当然、あまりの事態に残された三人は混乱した。マスターと同じようにサルタが父親なのかと三人も考えた」
「そうですよね」
「過去を振り返ると、確かにカニイとサルタは仲はよかった。でもそれだけ。根拠は何もない」
「そうですか…」
「そしてサルタの死と遺書の謎」
「はい」
「遺書どおり娘がやったのか?でも娘はサルタより前に死んでいる。娘はどうやってサルタを殺したのか?そもそも本当に娘がサルタを殺したのか?」
ここまで話して女はようやく四杯目の酒を飲み始めた。そして笑いながら言った。「三人ともお手上げ。解決できず。謎は謎のまま。これにて猿カニ合戦は幕を下ろしましたとさ」
「…そんな…それはひどすぎます…」