「申し訳ございません。私の頭では理解できません」
「彼女がサルタを実の父親だと考える根拠はまったくなかった」
「それは後々彼女に聞けば分かるのでは?」
「それができなかったのよ」
「なぜです?」
「彼女はその前に死んでいたから」
「……あの…もう一杯飲んでもいいでしょうか…自分で払いますので…」
「気にしないで飲んで。全部私につけていいから」
「…ありがとうございます…」
外ではまた雨が降り出していた。強くはないが重みのある雨音だった。「また降ってきたようね」
「…ええ…」
「もうすぐこの話も終わりよ。マスター、もうちょっとだけ聞いてくれる?」
「…もちろんです…申し訳ございません…話の筋がよく分からなくて…」
「それはそうよね。私も初めて知った時、よく理解できなかったわ」
「続きをお願いします」
「サルタが発見された時、なぜか側に娘の遺書が置いてあった。遺書には正確にはこう書いてあった。”私がママとパパを殺しました。その罪を私は柿の木の下で償います”三人が周りの柿の木をしらみつぶしに探すと彼女を発見した。その様子は母親のそれとまったく同じだった」
「十歳の少女がですか?なんてひどい……えっと…ちょっと待ってください。ママ、ですか?」
「不思議なことに遺体の様子から彼女は明らかにサルタより先に命を絶っていたのが分かった」
「…どういうことでしょう?」
「行方不明になった時、サルタを含めた四人は彼女を探した。でもその時にはすでに彼女の命はなかったの。これがさっき言った完璧なアリバイ」
「サルタさんを殺したのは娘ではないということですか?しかもどうしてママのことを彼女は知っていたのでしょう?その遺書は一体?」