小説

『人参』谷ゆきこ(『檸檬』梶井基次郎)

 3日後の燃えるゴミの日にそこを通りかかった時には、もうそこに人参はなかった。あの、いかにも土から顔を出してますという風体の人参を思い出すと、あれは自分がやったのだと誰かに誇示したかったような気分にもなる。おそらくあれは私が大人になってからしでかした、もっとも馬鹿馬鹿しいおふざけだっただろう。そう思うと、あれから数日たった今でも、相変わらず忙しく煩わしい仕事中であっても、ふっふと自然に笑みが湧くのである。

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