「それはな、庭を荒れ放題にしてしまったからだろう。そういや爺さんは死ぬ前、家の中より庭にいる方が多かったしな。この庭が、あの人にとっての家なんだろうよ。でな、やっぱり考えたんだがお前に任せるよ、この庭は。」
「いいの?」
「ああ。いいさ。手伝うことがあったら言ってくれ。」
「父さんのポリシーは?」
「ん?」
「自然体のままにしておきたいっていう願望は?」
父は一呼吸の間を置いて、少し恥ずかしそうに俯き鼻を掻きながら、ああ、と呟いた。
「手付かずにしていたのは、そうだな、その通りだ。あんまりいじり過ぎるのは嫌いだからな。何事も自然体が一番だから、な。よく気づいたな。」
「なんとなくね。」
「でもな、そんなポリシーってほどのもんじゃないさ。実はお前が庭の手入れをしてくれるって言い出すのを待っていたんだぞ。」
「待ってた?」
「ああ、俺にとっては庭がどうなろうと、どっちでもいい。爺さんの庭は、爺さんのことが好きだったお前に任せるよ。俺にはな、そういうセンスがないんだよ。ただ、爺さんが悲しんでるとしたら、もうちょっと何とかしないとな。」
また恥ずかしそうにして、上を向いて笑っていた。
「なら手伝っもらおうかな。」
「ああ。だが、お前が指示してくれよ。どうすればいいか。俺には全然わからん。」