小説

『図書館員、人類を救う』平井玉(『天の羽衣』)

「判定・・・何を判定するの」
「環境アセスメント及び有害生物の駆除の是非」
 ハリウッドのSF大作を見てきたヒロヨシは、この少女(に見えるモノ)が人類の存亡を決定する存在であることを即座に理解した。・・・とすると、図書館に現れた理由はなんなのか。
「えーっと、つまり調査中なんだね?」
「評価中」
「まさか、小説を読んで人類を、その、駆除するかどうか決めるわけじゃないよね」
「小説はその生物種の考え方を端的に表現します」
「・・・あの十冊だけで決めるわけじゃないよね」
「アジア地域は、あれで判断します」
「ほ、他の地域はもう終わってるの?」
「いいえ。私の船は太平洋に着水し、東京湾の海溝内に着地しました。ここが最初の評価地です」
 ちょっとほっとした。でもなぜこんな半端な地域に?国会図書館とか、日比谷図書館とかに行ってほしい。
「調査地は、コンピュータがランダムに選択します」
 ヒロヨシの想いが顔に出ていたのか、少女自ら補足してくれた。
「アジアで十冊は少なすぎない?」
「地球の評価は私一人に任されています。期限もあります」
「そ、そんな乱暴な」
「暴力は用いません」
「いや、そういう意味じゃなく・・・」
 

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