「経過観察が必要になります。その為に、地球での拠点を設けなければなりません」
「・・・つまり、あの、日本に住むってこと?」
「そうですね」
「あの、それ、僕に関係あるって思っていいのでしょうか」
「そうですね」
少女が微笑んだ。初めての笑顔を見て、ヒロヨシはめまいを覚えた。
「マイホームパパ、になりそうなのは、あなたが一番でした」
うわー、日本人にうけなくても、地球のどこかに自分を待ってる人がいると思っていたが、まさかそれがユニバースだったとは!ヒロヨシは涙をこらえながらこぶしを握りしめた。相田さんだったら「それ、一番扱いやすい男って意味じゃないの」って言うかもしれないけど、そんなのどうでもいい。とにかく明日もまた日が昇る。こんにちはこんにちは世界の皆さん、おめでとう!
はっと気が付くと、ヒロヨは土間で縄をなっていた。
「わしは漁師。この縄は投網の直しに使うんだ、な」
なんだか急に夢から覚めたようである。辺りを見回すと、見なれたはずの我が家だった。囲炉裏では、女房がさっき作っていたアラ汁がいい匂いを放っている。
「これでいい。これでいいんだが、なんだか夢を見ていたような」
先ほどまで、極楽のような豊かな世界に暮らしていたような。いや、地獄のようでもあったような。ふいに暗くなったのは、女房が戸口から入ってきたからだ。粗末な着物を着て、ざるを抱えている。そんな所帯じみた格好でも、おでこの中が痺れるほどに美しい。